アボルファズル・ジャリリ監督&麻生久美子インタビュー

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『ハーフェズ ペルシャの詩』、アボルファズル・ジャリリ監督&麻生久美子インタビュー  頭をからっぽにして、美しい映像、言葉の響きを楽しんでほしい
アボルファズル・ジャリリ 麻生久美子 映画にドラマにひっぱりだこの麻生久美子さんが初海外映画として選んだ作品『ハーフェズ ペルシャの詩』。イラン版「ロミオとジュリエット」とも称されるこの作品づくりのエピソードなど、ジャリリ監督と麻生久美子さんにお聞きしました。
 
ハーフェズ ペルシャの詩
ハーフェズ ペルシャの詩
『ハーフェズ ペルシャの詩』
コーラン暗唱者だけに与えられる称号“ハーフェズ”と呼ばれる青年は、母方の実家チベットで育ちペルシャ語もままならないナバートにコーランを教えることに。壁越しに、コーランや詩を詠み合い、見つめ合うこともないまま恋に落ちる二人。聖職者であるハーフェズは罪を問われ、称号を剥奪されてしまう……。ゲーテにも影響を与えたという伝説の詩人ハーフェズの詩句にインスパイアされたジャリリ監督の描く美しい愛の神話。

監督・脚本・編集・撮影/アボルファズル・ジャリリ
出演/メヒディ・モラディ、麻生久美子、メヒディ・ネガーバン
企画・製作/First Film Milad Co. 、Bitters End, Inc
配給/ビターズエンド
http://www.bitters.co.jp/hafez
アボルファズル・ジャリリ Aborfazl Jalili アボルファズル・ジャリリ
1957年6月、イラン中央部サヴェーに生まれる。79年イラン国営テレビIRIBに入社し、短編ドキュメンタリーや短編劇映画を通じて独自の手法を模索。3作目に当たる『かさぶた』(1987)で注目を集め、95年には『7本のキャンドル』でヴェネチア国際映画祭で金のオゼッラ賞を、翌96年『トゥルー・ストーリー』と01年実際のアフガン難民の少年を主演に起用した『少年と砂漠のカフェ』がナント三大陸映画祭でグランプリを受賞。世界にその名を轟かせている。
麻生久美子 麻生久美子 あそうくみこ
1978年6月、千葉県生まれ。94年「三菱電機・ハイビジョン」CMでデビュー。今村昌平監督の『カンゾー先生』のヒロインに抜擢され、この作品で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞ほか、多数の賞を獲得。以降、『ひまわり』(2000、行定勲)、『ラストシーン』(2002、中田秀夫)、『THE 有頂天ホテル』(2006、三谷幸喜)などに出演。06年にはテレビドラマ『時効警察』でコメディタッチの演技を披露し、新たなファン層をつかむ。日本の映画、テレビ界、ともになくてはならない存在として輝いている。
アボルファズル・ジャリリ 麻生久美子
――監督からの熱烈な出演オファーがあったとお聞きします。麻生久美子さんのどこに惹かれたのでしょうか?

ジャリリ監督(以下監督): 僕は映画を観ていると、10分ほどで眠くなってしまうんですよ。知り合いに日本映画を観に行こうと誘われて、寝ても怒らないという条件付きで映画館に向かいました。映画は今村昌平監督の『カンゾー先生』だったのですが、珍しく眠らずに最後まで拝見しました。終盤の久美子さんがクジラをモリで突くシーンを観て、「彼女だ!」と感じたのです。久美子さんの中には非常に大きなエネルギーが隠されていると感じたのです。そのエネルギーが爆発するところを見てみたい、その手伝いをしたいと考え、7、8年前から出演のオファーをしていました。


麻生久美子
――麻生さんにとって、この作品はどんな影響を与えてくれましたか?

麻生久美子(以下麻生): 7、8年前に依頼をいただいて、5年かかってやっと具体化した作品です。完成までに2年という月日が必要でした。最初はジャリリさんの、誠実な、それでいて茶目っ気のある人柄にファンになりました。その後、作品を観させていただき、ぜひ一緒にお仕事させていただきたいと願いました。時間もさることながら長年の願いが叶い、しかも、海外初進出作品にもなり、私にとっては運命としか表現できない作品になりました。


アボルファズル・ジャリリ
――麻生さんは異文化の中で演じられたナバート役をどのようにとらえました?

麻生: 育った環境、取り巻く文化は違いますが、恋への悩み、彼女の心の変化など、どこの国でもどんな時代でもあまり変わらないものなんだ、と感じました。ナバートはチベットで育ちイランの言葉や風習になじんでいないという設定で、私の実生活とはまったく違う環境で生活している女性ですが、それでも共感できる部分がたくさんありました。
監督: みんな、文化が違うと口にしますが、地球という規模で考えたら、僕たちはみんな地球人なんですよ(笑)。


麻生久美子
――撮影中の生活で困ったことはありましたか?

麻生: そうですね。イランは日本の気候と違い乾燥がひどくて、目薬が手放せなかったですね。それから、宿泊先のホテルの料理がおいしいのですが、4種類しかないんですよ。あれは、慣れることができませんでしたね。
監督: 日本にはそんなにたくさんの料理があるの(笑)? 彼女は現地のスタッフたちの中にすんなり溶け込んでいて、中に外国人がいるなどと誰も思わないほどでした。そうそう、夫役のネガーバンは非常に信仰心が厚くて、女性とは目を合わせてはいけないと考えているほど。彼女をバイクの後ろに乗せて走るシーンで僕は久美子に「彼の腰を思いっきり抱いて」と指示したのですが、彼はとても嫌がっていました。撮り直しが必要で再度バイクを用意したら、逃げ回っている。「どうした?」と聞くと、「久美子さんが自分の体を触るから困る」と(笑)。
麻生: ひどいっ(笑)! それじゃ、私が痴漢みたいじゃないですか。彼は私とバイクに乗るたびにブツブツ、神に許しを乞うていたらしいのですよ。監督は、彼の信仰心をわかっていてそんな指示をしたんですか?
監督: まさか! 僕も後で知ったんだよ(笑)。


アボルファズル・ジャリリ 麻生久美子
――ジャリリ監督独特の撮影の進め方はあるのでしょうか?

監督: 僕は撮影中に別のことをさせません。その点は辛かったと思います。例えば、あるシーンを撮影するのに朝から夕方5時までかかるとします。そういうときは5時までランチはなし。気持ちが変わってしまうでしょ?
麻生: ずっと休憩のない撮影が辛いとは思いませんでした。監督は役者がリラックスして自然の演技や表情をするのを待っているんですね。そんな撮影でしたから、スタッフの方たちも仕事をしているのにのんびりしていて、明るく自由で、いつのまにか時間が過ぎてゆくような感じでした。ふんわりとした自然の流れに身をおいているような、非常にリラックスした中で演技をすることができました。そんな経験ができたのも、私にとっては運命の作品ですね。


――映画を楽しみにしているファンへひと言お願いします。

監督: 何も考えず、頭をからっぽにして、映像や音楽を楽しむように観てください。この映画はきっと観客たちを別の世界へ連れていってくれますよ。
麻生: イランという国の事情やイスラム教について知識がない日本人が観ても、十分にメッセージを感じられると思います。監督のおっしゃるように、映像や言葉の響きなども楽しんでほしいですね。
撮影/菅沢健治
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