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ウワサの資格探偵団
言語聴覚士 羽飼富士男さん 言語聴覚士

羽飼富士男さん


言語聴覚士のレベルをアップし、認知度を高めるとともに、
より多くのコミュニケーションや食べることの障害でお困りの
患者さんを支援したい
言語聴覚士とは、具体的にどういった分野に属されるのですか?

我々の仕事は、リハビリテーションのひとつです。リハビリテーションとは主に、病気や事故などの後遺症により日常生活や社会生活がうまくいかなくなった方が各々の能力を元の状態に近づけるための、あるいは別の手段や方法を使ってそれぞれの方の生活の質を高めるための支援を行う部門です。手芸、工作といった手作業をすることで社会的適応能力を高める手助けをする作業療法士と、歩くなど、身体運動機能や身体能力を高める手助けをする理学療法士、言葉や食事の機能を回復させる我々、言語聴覚士が患者さんのお手伝いをしています。

具体的な内容を教えてください

成人の場合ですと、脳卒中などの脳の病気により、言葉を操作する障害である言語障害と、食べることの障害である摂食・嚥下障害が起こることがあります。この障害を回復させるお手伝いをします。言語障害ですが、発音・構音障害、失語症などが治療の主な対象です。発音・構音障害は、話すときに使う舌や唇などの口周りの筋肉に麻痺が起こり、いわゆる呂律がまわらない状態です。これらの筋肉の動きを回復し、発音を明瞭にする、その結果コミュニケーションをスムーズにするお手伝いをします。また、言語発達の遅れや発音に問題のあるお子さんの訓練も言語聴覚士の重要な役割です。

失語症とはどういった症状でしょうか?

脳の言語を司る部分の障害により起こる言語障害です。ごく簡単な例を挙げれば「はさみ」というものの名前を言うのに、私たちはそれが「はさみ」とわかって、「はさみ」という語を想起し、それに対応する音を思い出し口から発音します。ところが失語症の方は、それが「はさみ」だとわかっていても、その語や音を想起しにくいのです(喚語困難)。ただ物の名前は頭に入っているので、例えば最初の「は」という音のヒントを与えると答えることができます。そこで実物や絵カードなどを使って頭の中に入っている言葉を引き出す訓練をすることが、我々の仕事のひとつになります。さらに失語症は話すだけではなく、相手の言った言葉を聞いて理解すること、文字を読んで理解すること、文字を書くことにも患者さんによって程度の差はありますが、障害を受けることがあります。このような患者さんに対して言語機能を高めコミュニケーション能力を改善するための訓練を行います。

食べる障害とはどういった症状でしょうか?

言語聴覚士 羽飼富士男さん脳を広く障害されると、摂食・嚥下障害という、食べる障害も生じます。主な症状としては食べ物を上手に咀嚼できない。ゴックンという飲み込むための反射がすぐに起きない。飲み込んでもノドに食べ物が残ってしまう。このような症状があると、食べ物が気管に入ったりして、肺炎や窒息を起こす危険性があります。そこで我々の言語聴覚士は、それぞれの患者さんが安全に食べられる食物の形態、食べる時の姿勢、一口の量などを設定して、食べる訓練を行います。そして安全な食事を続けることで嚥下能力が回復するのを待って段階的に我々が普通に食べている状態に近づけて行くのです。ゴックンという飲み込むという行為は、実際に食べ物を飲み込まないとなかなか回復しません。だから安全に食べるという経験を積んでいただくことが食べる訓練の中心になるのです。
実際に患者さんに食べさせるのですか?

特に摂食・嚥下障害のリハビリの場合、肺炎や窒息という危険があるので医師が中心となるのですが、医師は総合的なコーディネーターで、我々はチームの一員として参加します。言語聴覚士は医師と一緒にさまざまの検査を行い、患者さんが安全に食べられる条件を探し出し、もっとも危険な段階での食べる訓練に関わります。そして、ある程度安全に食べられるようになったら、看護師さんや介護士にバトンタッチします。このように摂食・嚥下障害のリハビリにおいて言語聴覚士は重要な役割を果たしますが、1人の患者さんの回復のためには、さまざまな専門家の力が必要となるのです。患者さんの嚥下能力に合った食事を作るには栄養士の方の力が重要になり、安全に食べるためには介護士、看護師の方々の技術が必要になる。食べたあと、私たちは舌や唾液で口の中を自然にきれいにすることができますが、患者さんには難しい場合がありますので、口の中を生活に保つために看護師や歯科衛生士の方の助けが必要となるのです。
羽飼先生は、なぜ言語聴覚士を目指されたのですか?

大学卒業後、別の国家資格を目指していましたが、27歳のときに断念。でも仕事をしないと生活できないですからね。漠然と社会貢献のできる職業に就きたいというのはあったけれども、何がいいのか悩んでいました。そんなとき、新聞で「言語聴覚士が少ない」という記事を見つけたんですね。こういうものがあるんだ、と病院に電話して見学を頼みました。実際に治療現場を見て、自分に合っているのではないか、とさっそく3年課程の学校を探し入学しました。
3年というのは長いと感じると思うのですが、勇気の必要な決断ですね

入学する頃に判明したのですが、まだ国家資格になっていなかった。資格として保障されていないと、就職先がないんですよ。でも、学校側の説明では近々資格となる予定だから、ということでその言葉を信じました。30歳目前ですからね。必死で勉強しましたよ。もう後はないという意気込みで。クラスメイトとは10歳ぐらい年が離れていて、記憶力は彼らのほうが確実に上。でも、貯金をつぎ込んでいる、という意気込みはすごかったと思います。記憶力のハンデはありましたけど、その代わり、年を重ねていたお陰で、実習で患者さんとのコミュニケーションは他の生徒よりも取れていましたね。患者さんの気持ちに近付くことができていたと思います。
その後、資格として認められたのですか?

結局言語聴覚士の資格は、それから10年ほど経った平成12年にやっと国家資格として認定されました。学校卒業後は、現在の勤務地でもある小田原市立病院で言語聴覚士として働いています。障害には重度のものもあり、訓練したことが直ぐに改善に結びつかない患者さんもいます。目に見えるカタチで現れないときは、自分は何をやっているのだろう、と落ち込むことがありますね。けれど、だからこそ、声を取り戻せることができた、職場復帰ができた、と喜んでくれる患者さんを見ると、心の底からうれしい。訓練の成果が出たのは患者さんの努力の結果なのですが、我々がきっかけを作ったということで、生きがいに、励みになりますね。
実際の治療は、学校での勉強とは違うものですか?

言語聴覚士 羽飼富士男さん
喉頭ガンなどにより、声帯を切除した方のための電気式人工喉頭。こういった道具を使って声を出すこともある
我々の仕事は言葉を回復させることにありますが、コミュニケーションというのは言葉だけではなく、感情でも表せるんですね。言葉では表現できないけど、目や顔の動き、動作で感情の交流はできる。感情に触れればコミュニケーションは取れるのです。このことは、学校での学習ではなく、実際に治療という場で患者さんに教えてもらったこと。このように、知識だけではなく、患者さんから教えてもらうことはたくさんありますね。
今後の活動を教えてください

今後は臨床、実習生などの教育、研究、言語聴覚士そのものをアップさせて、かつ、言語聴覚士という存在を日本全国に認知させていきたい。我々の活動により、障害でお困りの方を少しでも支援できれば、と思います。
言語聴覚士

病気や交通事故、発達上の問題などで、言葉によるコミュニケーションや摂食や飲み込む動作に現れた支障を、回復、改善に向けて専門的に対応する専門職。医療機関、保健・福祉機関、教育機関など幅広い領域で活動し、コミュニケーションの面から豊かな生活が送れるよう、言葉や摂食・嚥下に問題を持つ方とその家庭を支援するもので、平成12年に国家資格として認定された。文部科学大臣が指定する大学、または構成労働大臣が指定する言語聴覚士養成所に入学、必要な知識、及び技能を修得して卒業することで、国家試験の受験資格を得ることができる。
http://www.jaslht.gr.jp/index.html

取材・文/岡田晴海
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